花瓶─狂気の恋─

拘束具はビクともしないくらいガッチリと止められており、逆に暴れる程に身体が傷んでしまう。


ギギィ....


「晶子〜!ごめんね待たせちゃって!」



晶子の状況とは全く反対の雰囲気を漂わせた真帆は、まるで待ち合わせに少し遅れてしまったように少し笑っていた。

晶子は真帆の姿を見るとスっと目線を逸らしてしまった。
泰河を殺してしまったかもしれない、そんな疑惑が確信もなく怒りへ変わっていく。だが真帆との楽しかった日常が浮かぶと、真帆に対しての思いがモヤモヤになり、どんな目で見ればいいのか分からなかった。


そんな事をしらない真帆は晶子の目の前でしゃがみ、下から目線で晶子を見た。


「もう晶子〜。まだ怒ってるの?いきなりこんなとこ連れてきてごめんね...でも必要なことだから我慢して。」


「真帆....本当に泰河君を殺したの?あの女の人が言ってたけど...嘘でしょ?」


晶子は勇気を振り絞って言った。聞きたいようで聞きたくない事、晶子は心臓が飛び出そうになるくらいに緊張していた。

心の中で何度も願う晶子の必死さを嘲笑うかのように、真帆はニヤッと笑って晶子に告げた。


「ううん。殺したよ。金槌であの男の頭を滅多打ちしてあげた。途中から首がもげたけど、蚊を潰すみたいになるまで叩いたよ。」
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