花瓶─狂気の恋─

その日をきっかけに真帆は千紗に積極的にアタックした。部活動では写真を撮れば千紗にアドバイス、休憩中にも話し掛けた。
次第に千紗は真帆に心を許していき、プライベートの事もどんどん会話に混ぜてきていた。

真帆が欲しかったものは千紗からの信頼と時間だった。その分殺す機会は増えるし、容疑者としての人物像から離れるからである。

そんな目的を知る由もない千紗はどんどん真帆と親しい関係になっていく。
大好きな悠雅との会話を必要最低限に抑えていた。自分の抑制が出来ないのは真帆自身分かっていたからだった。


千紗との関係は時間が過ぎれば過ぎるほど良くなっていく。だが、肝心の殺害プランは白紙。どうしようかと困っていると、ある光明があった。
それは六月の上旬、千紗の家に初めて遊びに行く時だった。


行動してから二ヶ月経つが真帆は悠雅と千紗に抱く想いは揺るがない。むしろ強まっていた。
だからこそ、真帆は焦っていた。


...このままじゃあ糞女が悠雅先輩に告白してしまう時が来るかもしれない....早くしないと、この二ヶ月で積み上げたものが台無しに...


千紗の家へ歩いて向かいながら、真帆は親指を強く噛んでいた。イライラが治まらない。只でさえ千紗の家に入るというのも苦痛と感じているのにだ。
真帆にとってはこれは拷問、死にたくなるようなキツい拷問だった。
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