花瓶─狂気の恋─
こいつ...なんでお前みたいな尻軽女が先輩と近い所に住んでるの?おこがましいんだよ...そもそも生きてることがぁ〜。さっさとくたばれ!
あまりにも理不尽過ぎる怒りが込み上げる。
すると千紗が飼ってる柴犬が、真帆の殺意に反応したのか顔を顰めて吠えてきた。
「え?なになに?どうしたのムツ〜」
千紗はそう言いながら柴犬に近寄り頭を撫でた。
「...先輩の犬なんですか?」
「うん、ムツって言うんだ。毎日私がちゃんと散歩してあげてるからスリムでしょ?
でもおかしいな....大人しいから吠えることなんてあんまり無かったのに...」
「...そうなんですね。」
ムツは千紗に撫でられながらも真帆にギラギラと歯を向けて唸っていた。だが、真帆が一歩近付くとツムは何歩か下がった。
そこで真帆はムツはあくまで怯えていることに気付いてニヤッと笑う。
そんな事を知らない千紗はあっさりと真帆を家に招き入れた。
千紗の部屋は至ってシンプル。必要最低限の物しか置かれてなく、味気のない部屋。
真帆は鼻で笑ったが、 勉強机に置かれていた一つの写真立てを見て固まった。
「あ、これ?昔の私と悠だよ。この時は確か毎日のように遊んでたなぁ〜。悠は今じゃあ私の立ち位置だったんだ。信じられないでしょ?」