花瓶─狂気の恋─

仲良く写っている二人の写真。リビングを背景に肩を組み合って笑顔でピースを決めていた。真帆は必死に耐えていた。千紗の首を締めてやりたいと怒りで震えた。


「ん?どうしたの?やっぱ寒いかな...私の部屋冷房めちゃくちゃきいてるから....」


千紗は真帆の返答を聞く前にリモコンでエアコンを操作した。
真帆は写真立てを拾い、じっと見つめる。

欲を言うなら悠雅だけを切り抜きたい。だが、それでも邪魔してくるのは千紗。写真までも道を閉ざしてくる千紗に真帆は嫌悪感を抱いた。


「あっ!そうだ真帆ちゃん。早速私の写真見てみてよ。私の努力の結晶なんだぁ〜。」


千紗は一人興奮気味にベットの下からダンボールの箱を取り出し、その中に入っている大量の写真を一枚一枚丁寧に床に並べていく。

猫や犬、小鳥や稚魚、植物など色々な写真だった。どれも綺麗で惚れ惚れするような写真ばかりなのだが、「千紗が撮った写真」というだけで、その写真の価値は一気に底辺だと真帆は感じた。


「どう?どれも私の自信作!特にこの絶景!やばくない!?この写真越しに伝わる緊張感っていうのかな?なのに綺麗!この二つが上手くマッチングしてると思うんだよねぇ〜。」


「あぁ....そうですね。」
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