花瓶─狂気の恋─

真帆は鼻で笑いながら、その女性の首元へカッターを刺した....
だが、それは紙一重で避けられた。避けられた事に反応するのに真帆は時間がかかり、少し固まった。
その瞬間で、真帆はカッターを持っている手首を捕まれ、腹に鋭い痛みが生じた。


「がっ!...はっ!」


正確には鳩尾、真帆はその女性に膝で鳩尾を攻撃されたのだ。あまりの苦しみに息を全て吐き出してしまい身体を丸めると、裏首を思いっ切り押された。

真帆は膝を軸に一回転し、地面に背中を叩き付けられた。真帆は悶絶し、今にでも意識が飛びそうになる。
その隙に女性は真帆をうつ伏せにして、真帆の両手を裏首の方へ持っていった。


「ギッ!....い、痛ッッッた!」


「あ、意外に上手くいくものね。本で読んで、ぶっつけ本番じゃあ失敗すると思ったんだけど、これは予想外。」


その女性はあくまで冷静に呟いた。
真帆は押さえつけから逃れようと身体を上下左右に激しく振るが、女性が両手を更に首裏の方へ近づけると、激しい痛みが襲った。


「痛い!!痛い痛い痛いいいい!!」


「大人しくしてなさい。神経ちぎれるわよ?」


そう言われ、真帆は大人しくすると、両手を背中の方にすっと下げ、痛みを和らげた。
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