私は、君のことが
穂純にバレないようにニヤニヤしていると、あっという間に購買部に到着して、手の温もりも離れていった。
(あ……)
ブンブンと首をふって、邪念を弾き飛ばす。
「うあーーーーー!また負けた!」
穂純が叫んでいるので見ると、仲が良さそうに話している男子生徒がいた。
シューズの色からして、1年生だ。
1年生の教室は、A棟4階で購買部から1番遠いはずなのに、ご苦労なことだ。
「やったね!俺一応、バスケ部だから足だけは速いんだなーこれが!」
「もーー!実は授業が終わる1分前に教室出てるんじゃないのー!?」
「え、バレたか!」
キャーキャー言いながらじゃれて、購買部のおばちゃんに「早く!次が詰まってる!」って怒られてる。
(何やってんだか…)
モヤッとした何かが心から出そうになるが、閉じ込める。
すると、バチッと例の後輩君と目が合った。
…が、すぐに目を逸らされた。
(……?)
穂純は無事チョコフランスを手に入れたようで、ニコニコしながら私の元へ戻ってきた。
「戻ろっか。」
「うん!」
この笑顔、反則です。
教室に戻ろうと購買部に背を向けると、後ろから声が。
「じゃーね、穂純先輩!明日も勝つから!」
(明日も来るのか…)
「じゃーね!明日は負けないから!」
(明日も行くのか!?)
2人のやり取りに唖然としていると、後輩君が少し照れくさそうに、
「雅先輩も!また明日!」
何故私にも?と思ったが、何も返さないのも可哀想なので、ペコッと会釈した。