運転手はボクだ

「ふぅ。あ、ごめん、有り難う。片付けてくれたんだ」

「あ、勝手にごめんなさい…。色々、勝手にいじられるのを嫌がる人も居るから。お節介してごめんなさい…」

ほぼ洗い終わったところに声を掛けられた。

「いや、助かったよ。有り難う」

「いえ…。千歳君、大丈夫でした?寝ました?」

「あ、ああ」

…そろそろ、帰るタイミングよね。

「あの」「あのさ」

あ。

「珈琲、いれるよ。そのくらいの時間はまだ大丈夫?」

あ、ソワソワしてしまったから、帰ろうとしたこと、伝わったんだ。

「はい、大丈夫です。では、遠慮なくいただきます」

「じゃ、あ、向こうで待ってて?」

「はい」

リビングの方に行き、ここでいいかなって、取り敢えず、ソファーに座った。


「はい。インスタントだけど」

カップが置かれた。

「有り難うございます」

…。

静かだ。やっぱり、自然にこうなっちゃうよね。小さい子供が居ると、子供中心で会話をしがちだから。まして私は初対面でここにお邪魔してしまってる訳だし。話す事なんて特に無いよね…。
とても気まずいです。

「千歳…君に何か言った?」

正面から声がした。

あ。内緒話のことだろうか。

「あの…星を見に行くんだって、言ってました。あ、でも…これは内緒のお話でした」

私に教えてくれた事。千歳君、お父さんに言っちゃったけど、お父さんはいいよね?

「はぁ…そんな事を」

え?どこかに出掛けて見るとか、そんな予定の話では?

「何だか…七夕も近いですし、保育所で飾りとかも作ったりしてる時期かなって。思って聞いてました」

「そうだろうね。作ってるって、話してたから」

な、に?何だか…ちょっと、空気が重い?
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