運転手はボクだ
「なあ…」

「もう、そっとしといてやってください」

「名前。千恵って、やっぱり千歳と恵未ちゃんの合わせ技か?」

技ではないけど。

「そうですよ」

「鮫島…」

「…何ですか?」

「千歳と恵未ちゃんの子なのか」

…。

「…はぁ、…違うに決まってるでしょ。馬鹿な事言わないでください」

「何故、自分の名を使わなかったんだ?読み方なんて、どう読ます事も出来るのに」

「それ、考えなくもなかったですけど、無理に読めない名にするより、家族の繋がりのある名がいいと思ったからです」

名付けでよくあるみたいに、父親と母親の一文字を取って、という付け方。俺と恵未の字を使ったら、千歳が寂しい気持ちになると思った。だから、初めから、男でも女でも、千歳と恵未の字で、名前を考えようと思っていた。

「ん。…確かに。…いい考えだな。繋がりを感じられる」

「はい」

「貴史に子っていうのもいいな」

「…誰の子ですか。…何て読ませるんですか…」

「私と恵未ちゃんの子。…字面はほぼ、私の子か」

100パーそうですけど。

「それは無いですから」

「解ってるよ。希望的欲望じゃないか」

…。

「千恵。いい名前だ。賢くて、美人になるぞ。鮫島、私を息子にしないか?」

はぁあ?何を、いい事が閃いたみたいに言ってるんだ。

「社長に千恵は渡しませんよ」

本当に親子の年齢差じゃないか。はぁ。突拍子もない話ばかり。真面に一々取りあってなどいられない。
思えば恵未は、この社長の言動をほぼ毎日受け流してるんだから…。俺なら疲れて世話をするのもとうに嫌になってるよ。

沢山労ってあげないと。出産は女性にとって物凄く重労働なんだから。

「次は男の子か」

「え?」

「子供だよ」

「いえ、もう…子供は二人で、と、できた時に恵未と決めてます。恵未がそれがいいと」

「そうか。流石だな恵未ちゃんは。千歳の事をよく考えている」

「はい。恵未には敵いません」

「私もだ。どんなに攻めても空かしても全く揺るがない。掌の上でこうだ」

…揺るがれては困るんだ。

「成さ~ん」

ん、何だろう。…まさか…千歳…。

「今行く」
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