運転手はボクだ
「どうした!」

恵未、千歳が何かしたんじゃ…。

「成さん、千歳が」

…はぁ。なんだ?恵末も、ちょっと"教育"が過ぎたんじゃないのか。男の子なんだからな、千歳は。
それも、男の子から男になりつつあるんだ。

「父さん、俺…」

「…なんだ」

言い辛いのか。

「言い辛い事か」

「うん。でも言う」

…。

「父さん、俺…。弟も欲しい」

…。は?

「あ゛」

「千恵見てたら可愛くて。だから、男の兄弟も欲しい」

「欲しいって…弟って…。そう希望通りには、簡単にいかない。それに、直ぐには無理だ」

「いいんだ」

「いいんだって、なんだ。今欲しいって言ったばっかりだぞ」

「弟じゃなくても、女の子でも。別にいいんだ。生まれなくても」

「どういう事だ」

「父さんが母さんを沢山好きでいてくれたら。それでいいんだ」

あ゛…。それって。…妊娠に関係なく…しろって事か。

フフ。成さん負けてる。千歳君、物凄く深い事を言ってくれてる。
私のために。

「親父が、親父の全部で恵未ちゃんを大事にして欲しいて言ってるんだよ。親父の心、全部で。今だけじゃない、ずっとだ。
そうじゃないと嫌だから」

「千歳…。心配はいらない。俺は…、父さんは、恵未に会って…、好きになった時から恵未しか心に居ない。本当だ」

「俺…親父が恵未ちゃんを泣かせたら…。子供、止めるから」

「止めるって、それは…」

「恵未ちゃんと、千恵を連れて家を出るからね」

…。

「解った。だけど、それは無い事だ。俺は恵未を泣かせない。だから、恵未も、千恵も、千歳にはやらない。
解ったか?よく覚えておけよ。恵未は生涯大切な人だ。俺がずっと守る」

…。

「だっ、て。…母さん、良かったね。俺、ばっちり聞いたし。証人だから」

有り難う、千歳君。お陰で、もしかしたら二度と聞けないくらいの思いを言ってもらえた。何年越しのプロポーズ?って感じ。

「親父が嘘ついて泣かせたら、その時は…」

「私がもらおう!」

…社長。

「…フ、フギャ、……フギャー、フギャーーー」

「母さん。きっとオムツだよ!」
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