運転手はボクだ
「申し訳ない…」
「いいえ、気にしないでください」
千歳君が目を覚まして起きて来てしまった。そして、私が帰る事を知って泣き出してしまったんだ。
そして今は、お風呂に入り、私の手を握ったまま眠ってしまった。
泣き出した千歳君を、まだ帰らないからとなだめてお風呂に入れた。
お風呂に入ったらまた直ぐ眠くなるだろうと、さめじまさんは言った。その間に帰ってくれていいからと言われた。
でも、それだと嘘をつく事になってしまうから。だから、こうして私はまだ居た。
「もう少ししたら大丈夫だと思うから」
手を離してもって事だ。
「話し込んでしまったから…。本当に申し訳ない。どんどん遅くさせてしまって」
「そんなに謝らないでください。こんな天使みたいな寝顔、見られて幸せなんです。
この顔には癒されますね…可愛い…」
思わず髪を撫でたが、大丈夫だった。
「あぁ、ずるいと思わないか?これでなにもかも帳消しだ。本当、子供って言うのは天使と悪魔の共存だ。
少しずつ成長して…上手く出来てるよ」
子供部屋で眠る寝顔を二人で膝をついて眺めていた。
「ずっと見ていたいくらい。あ、これは、今日、ちょっとしか関わってない、暢気な発言でした…失言です。子育ては毎日大変なのに。
千歳君はいくつなんですか?」
「んー、4歳になったばかりだ」
4歳か…。4年。一人で悪戦苦闘だったはず…。小さい時はよく熱も出すし。自分の時間なんて無いに等しい…。
「まだまだ先は長いな~」
「フフ、あ、…でも、小さくて大変なのはもう少しですよ。心配事はいくつになっても尽きませんが、学校に行くようになったら、少し楽になるかもです」
「はぁ、大変だ…。成り行き任せだな」
「フフ、きっと、友達ができて、自分の世界もできてきます。いつまでも、ととって、言ってくれなくなりますよ?そう思ったら、今が一番接触していられるのかも…」
あ、またうっかり頭を撫でてしまった。…起きないかな、…大丈夫?
「君…独身だよね…。でも子供、居るとか?」
「いえいえ、いませんよ」
「幼児教育者?」
「いいえ?全部想像です。…全部、無責任発言です」