運転手はボクだ
「では、そろそろ…」
手をそうっと離した。大丈夫そうだ。微動だにしない。
「今度こそ。ここでゴソゴソ話してるとアレだから。取り敢えず玄関に」
「…はい」
千歳君、バイバイ…。
「大丈夫かな…。本当に気をつけて帰って?」
「はい、大丈夫で…ぁ」
「ん?どうし、た?あ゛ーーー、はぁ………千歳ぇ……」
「とと、おねえさんかえっちゃやだ~」
いつの間に……。
「んー。あ、じゃあ、送って行こう。な?おねえさんは帰らないといけないから」
「うん!」
「て、事で…。送らせてくれる?」
「あ、はい。それで丸く収まるのなら」
「…お願いします」
「あ、いえいえ、こちらこそ、お願いします」
「おねえさん、くるま、いこう?」
「あ、わたしね、名前は、え、み、って言います」
「えみちゃん?」
「あ、うん。そうね。え、み、です」
小さい子から、ちゃんて呼ばれるのはどうなのかな…。あ、勝手に…名前とか教えてしまって…。
あまり親しくならない方がいいのかも。
「えみちゃん」
「は、い」
今のはさめじまさんだった。
「俺は、シゲル君、です」
あ。
「シゲル君?」
「はいそうです。ハハハ、行こうか」
「はい」
また勝手口から一緒に出て鍵を掛けた。
まるで、ここの住人だ。
チャイルドシートに座って1分と経たない内に千歳君は寝てしまった。