運転手はボクだ
「し、失礼します!」
は、あ、…危なかった。じゃない。ちょっと触れたじゃない…。
慌てて風呂敷を掴み、障子を勢いよく開け、長い廊下を物凄い勢いで走り抜けた。…なんてこと。私が煽ったの?
足を入れようとして、揃えてあったパンプスがコロンコロンと何度も倒れた。踏みつけて潰したり…、手で押さえ、何とか足を捻じ込み、お屋敷の玄関を後にした。
走った。
はぁ。…はぁ。かなり来てから振り向き、やっと息を整えるように歩いた。
私のいい人とは、つまり…いい人、恋仲、ということだ。その存在、関係になることが、私のものになる、ということだ。知ってる、そんな事くらい。…知ってる。
変に拘って理詰めをしたばっかりに、直接的に説明されようとしたのだ。……はぁぁぁ。
お茶碗とお菓子をスーッと左右に除けると、にじり寄られ、頭と背中に手を当てられた。あっと思った時は遅かった、いきなり唇が触れた。そして首筋にもだ…。
もう少しで倒され、前をはだけられるところだった。
大代さんが着物姿でもあったから、妙な色気に当てられそうになった。いや、ちょっとは当てられた…。だから、直ぐ思うように動けなかった。…ふぅ。…言い訳よ。…はぁ。
……あの人は、一体、何者?何をしてる人なんだろう。いや、何者なんて、何をしてようが関係ない。
結局、聞かれた私も答えず終いで、お互い仕事は知らない者同士なんだ。それも、別にどうでもいいけど。
さめじまさんは、あの人の事を社長だと言っていた。だから、何もしていない人ではないだろう。現に、あの日も外から帰って来た訳だし。オフの日ではなかっただろう。…上等なスーツ姿だった。
それに、あの御屋敷だもの…。
はぁ、ちょっと恐い経験だった。別に好んで煽った訳じゃない。いきなりそんな事をするとも思っていなかった。…甘いよね、その考え。
私以外、誰もいない、と、言っていたじゃないの。言葉は聞き流さず、ちゃんと、気にしてないと駄目だって事。
あれでは、何かあっても言い訳はできなかったかも知れない。強引に家に入れられたとはいえ、それを望んだのでは?と言われてしまうと、どんな弁解も…、証拠がない…。
大人もずるいから…。
「君…」
え゙?
「えみちゃん!」
は、あ、…危なかった。じゃない。ちょっと触れたじゃない…。
慌てて風呂敷を掴み、障子を勢いよく開け、長い廊下を物凄い勢いで走り抜けた。…なんてこと。私が煽ったの?
足を入れようとして、揃えてあったパンプスがコロンコロンと何度も倒れた。踏みつけて潰したり…、手で押さえ、何とか足を捻じ込み、お屋敷の玄関を後にした。
走った。
はぁ。…はぁ。かなり来てから振り向き、やっと息を整えるように歩いた。
私のいい人とは、つまり…いい人、恋仲、ということだ。その存在、関係になることが、私のものになる、ということだ。知ってる、そんな事くらい。…知ってる。
変に拘って理詰めをしたばっかりに、直接的に説明されようとしたのだ。……はぁぁぁ。
お茶碗とお菓子をスーッと左右に除けると、にじり寄られ、頭と背中に手を当てられた。あっと思った時は遅かった、いきなり唇が触れた。そして首筋にもだ…。
もう少しで倒され、前をはだけられるところだった。
大代さんが着物姿でもあったから、妙な色気に当てられそうになった。いや、ちょっとは当てられた…。だから、直ぐ思うように動けなかった。…ふぅ。…言い訳よ。…はぁ。
……あの人は、一体、何者?何をしてる人なんだろう。いや、何者なんて、何をしてようが関係ない。
結局、聞かれた私も答えず終いで、お互い仕事は知らない者同士なんだ。それも、別にどうでもいいけど。
さめじまさんは、あの人の事を社長だと言っていた。だから、何もしていない人ではないだろう。現に、あの日も外から帰って来た訳だし。オフの日ではなかっただろう。…上等なスーツ姿だった。
それに、あの御屋敷だもの…。
はぁ、ちょっと恐い経験だった。別に好んで煽った訳じゃない。いきなりそんな事をするとも思っていなかった。…甘いよね、その考え。
私以外、誰もいない、と、言っていたじゃないの。言葉は聞き流さず、ちゃんと、気にしてないと駄目だって事。
あれでは、何かあっても言い訳はできなかったかも知れない。強引に家に入れられたとはいえ、それを望んだのでは?と言われてしまうと、どんな弁解も…、証拠がない…。
大人もずるいから…。
「君…」
え゙?
「えみちゃん!」