運転手はボクだ
・思いもよらぬ告白
「…妙な事を」
「え?」
「あ、いや、何でもないんだ。部屋、見てみる?どっちでもいいから。好きな方に決めて?」
奥さんとの話が終わって戻った鮫島さんは、そう言って鍵をちょっと振って見せた。
「はい」
千歳君は奥さんが膝の上で広げた図鑑を興味深げに見ていた。
「こっちだ」
「あ、はい」
階段をついて上がった。
まず手前のドアを開けて、見た。
「じゃあ…こっちも」
隣のドアも開けて見た。どちらも特に。同じ作りだ。
「どっちがいい?」
「では、こっちにします」
「じゃあ、…これ、鍵」
渡された。
「はい」
決め手は特になかった。しいて言うなら、ベッドの布団の柄かな…。チェックがピンクだったから。
「荷物、置いとく?」
「あ、そうですね」
一旦下りて、バッグを置きに上がった。
夕暮れとともに、希望して吉田さん夫婦と一緒に夕飯をとった。メンバー的に…家族団らんのようだと思った。
地元の野菜が中心の優しい味付けのモノだった。千歳君はシチューを元気よくお代わりした。
お腹一杯になったら、眠くならないかと、ちょっと心配した。でも、そうなったらそこは鮫島さんが起こすのかな。フフ。
「そんなに歩かないけど、多少は距離があるからね」
「はい」
懐中電灯を持った。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけてね?お風呂、用意して待ってるから」
「はい。千歳、靴、履けたか?」
「うん!」
マジックテープを閉じ終わって立ち上がった。
「いいか?まだ上を見ちゃ駄目だぞ?暗くて危ないからちゃんと下を見て歩くんだ」
「うん。みない。ちゃんとあるく」
私も空は極力見上げずに行くことにした。うっかり見てしまいそうだが、楽しみは減らない方がいいと思ったから。それでも、もう燦然と瞬いているのは視界の端で解っていた。別荘がある場所自体がもう、綺麗な星空の下なんだから。ドアを開け一歩出れば見えていた。解っていた。
良かった、雲は無さそうだ。
そこは小高い丘になっていた。
「着いたぞ…千歳…目をつぶって?」
「こう?」
「そうだ。いいって言うまで開けるなよ?」
「うん…」
抱き上げて、更に小道を進んだ。
念のためだろう。胸に顔を付けさせていた。
「下ろすぞ?まだつぶったままだぞ?」
「うん」
下ろされて鮫島さんの前に立った。千歳君の肩に手を置いた。
「よし…、目、ゆっくり開けて上を見てごらん…」
「うん。……うわー。うわー…とと……うわー!」
千歳君は両手を上げた。
「え?」
「あ、いや、何でもないんだ。部屋、見てみる?どっちでもいいから。好きな方に決めて?」
奥さんとの話が終わって戻った鮫島さんは、そう言って鍵をちょっと振って見せた。
「はい」
千歳君は奥さんが膝の上で広げた図鑑を興味深げに見ていた。
「こっちだ」
「あ、はい」
階段をついて上がった。
まず手前のドアを開けて、見た。
「じゃあ…こっちも」
隣のドアも開けて見た。どちらも特に。同じ作りだ。
「どっちがいい?」
「では、こっちにします」
「じゃあ、…これ、鍵」
渡された。
「はい」
決め手は特になかった。しいて言うなら、ベッドの布団の柄かな…。チェックがピンクだったから。
「荷物、置いとく?」
「あ、そうですね」
一旦下りて、バッグを置きに上がった。
夕暮れとともに、希望して吉田さん夫婦と一緒に夕飯をとった。メンバー的に…家族団らんのようだと思った。
地元の野菜が中心の優しい味付けのモノだった。千歳君はシチューを元気よくお代わりした。
お腹一杯になったら、眠くならないかと、ちょっと心配した。でも、そうなったらそこは鮫島さんが起こすのかな。フフ。
「そんなに歩かないけど、多少は距離があるからね」
「はい」
懐中電灯を持った。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけてね?お風呂、用意して待ってるから」
「はい。千歳、靴、履けたか?」
「うん!」
マジックテープを閉じ終わって立ち上がった。
「いいか?まだ上を見ちゃ駄目だぞ?暗くて危ないからちゃんと下を見て歩くんだ」
「うん。みない。ちゃんとあるく」
私も空は極力見上げずに行くことにした。うっかり見てしまいそうだが、楽しみは減らない方がいいと思ったから。それでも、もう燦然と瞬いているのは視界の端で解っていた。別荘がある場所自体がもう、綺麗な星空の下なんだから。ドアを開け一歩出れば見えていた。解っていた。
良かった、雲は無さそうだ。
そこは小高い丘になっていた。
「着いたぞ…千歳…目をつぶって?」
「こう?」
「そうだ。いいって言うまで開けるなよ?」
「うん…」
抱き上げて、更に小道を進んだ。
念のためだろう。胸に顔を付けさせていた。
「下ろすぞ?まだつぶったままだぞ?」
「うん」
下ろされて鮫島さんの前に立った。千歳君の肩に手を置いた。
「よし…、目、ゆっくり開けて上を見てごらん…」
「うん。……うわー。うわー…とと……うわー!」
千歳君は両手を上げた。