運転手はボクだ

「んー、何でも無いよ?さぁて、ご飯を作らなくちゃな」

「うん」

「あ、えっと、私も何かお手伝いを…」

「ん?いいよ。大した物は作れないから。それにお客様だからね。…じゃあ、千歳の相手を頼めるかな?あっちで適当に。そんなに待たせないから」

「はい」

千歳君の手を取ってリビングに行こうとして止めた。

「千歳君、手を洗いたいから場所、教えてくれる?」

「うん、こっちだよ」

千歳君の手にそのまま触れてしまってはせっかく洗った意味が無くなるところだった。さっき一緒に行けば良かったかも。
小さい子供との生活に慣れてないから気が利かなかった。

「いつも自分でできるの?」

「うん」

「そう…偉いね~」

「もう、あかちゃんじゃないから」

「そうね」

「あ、洗面所に行くならこのタオル、持って行ってかごに入れておいてくれるかな。かごは千歳が知ってるから。ごめん」

「解りました」

受け取って洗面所に行った。ここだよ、と、洗濯機の横のかごを差してくれた。


戻るとエプロン姿のさめじまさんが卵を焼こうとしているところだった。シャカシャカとリズミカルに混ぜていた。
お鍋でお湯も沸かされていた。お皿が並べられていて、レンジで何かを温めていた。

フライパンにバターが入れられた。レンジが、チンと、鳴った。
取り出された物はチキンライスだった。どうやら、今夜はオムライスかな?子供は好きよね。私も好き。
お皿に取り分けると軽く形を整えた。

「ととのごはん、おいしいよ?おねえさんも、すき?」

ん?美味しいから好きって事ね。まだ食べてないけど。前倒しって事で。

「そうね。好きよ?」

これでいいかな?

「緊張する…。二人共、前から覗かないでくれ」

温まってバターが溶けたところに卵が流し込まれた。シャーっといい音がした。

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