運転手はボクだ
「…俺の夢は…」

「何だ?言うのはちょっと嫌か」

「そうじゃない。…弟か、妹が欲しい。今はそれが夢」

「あ…。千、歳…」

「俺、可愛がるし、苛めたりしないし。きょうだいが欲しい」

「大人だな~千歳は」

「社長…」

「あー、すまん。親子水入らずの会話だった。私は…恵未ちゃんと居よう」

…。

「難しい事だって解ってるんだ。俺が…親父の本当の子供じゃないから。でも、だから、それが理由で、喧嘩したらとか、そんな事が心配で、赤ちゃん、欲しくても我慢してるなら嫌なんだ。俺、やきもちは妬かないから。親父と恵未ちゃんと一緒に可愛がる。お守りだってする。…だから」

…はぁ、千歳。俺の昔つき合っていた人が結婚していて、子供も出来た話もした。
だから、親父は?って、そんな風に考えたのか?いや、兄弟が居る友達も居るだろう。色んな話もするだろう。もう、何も知らない小さい子供ではない。
きっと、自分との関係性を気にして、子供をつくらないんだと考えたんだな。そんな事、ずっと考えていたのか。

「…千歳…」

「お、…親父?何だよ急に。止めろ、…恥ずかしい」

抱きしめられた。

「いいから。…随分、大人になったな…まだ子供だけど」

「何訳の解んないこと言って…親父?…泣いてんのか…」

「…ん゙、ん゙ん゙。…違う。
…世話してくれるのか?眠いとか関係なく泣くぞ?おむつだって、…大きい方が出たら優しく綺麗に拭いてやらないと駄目なんだ。赤ちゃんはデリケートだからな。ハイハイし始めたら危ない物が無いかちゃんと片付けておかないといけない。何でも口に入れる。立ち上がって…歩き出したら、目の高さに危ない物は無いか、転んで頭を打ちはしないか、…ドキドキもんだ。いつだって、目は離せない」

親父…。

「そうやって、親父が俺を育ててくれたんだろ?
…なんだよ…俺に毎日全部やらせる気?…無理だよ。でも、手伝うから。
…早くしないと、恵未ちゃんはいいけど、親父…ジジイになっちゃうだろ。…運動会だって、俺の時は楽勝だったけど、思うように走れなくなるぞ」

「…フ。そうか…そうだな。…はぁ。これ以上泣かせるな…。気持ちは解ったから」

「やっぱ泣いてるじゃん…」

「…煩い…泣いてなんかない…」

…はあぁ…千歳。
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