four seasons〜僕らの日々〜



浴衣を着て、待ち合わせ場所に向かう。

楽しみでドキドキするはずの初デート。しかし、道を歩くカップルのように甘い空気になることはなかった。

蓮の歌を聴いてしまった。苦しさが募っていく。心の傷がさらに大きくなっていった。

重苦しい空気のまま、二人で花火を見つめ帰る。

色鮮やかで毎年見るのが楽しい花火も、今年はどの花火も女の子の目にはモノクロに見えた。ただ轟音を上げて空に形をつけるモノクロをぼんやりと見つめていた。

「ねえ、蓮は美桜のことが好きなの?」

帰り道、女の子は訊ねる。蓮は戸惑った表情だ。

「えっと……その……」

答えなんて、もう知っている。あとはそれを口に出すだけーーー。

「何でもない。今のは忘れて」

女の子の口から出たのは、心で考えていた台詞とは全く違っていた。
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