four seasons〜僕らの日々〜
脚本を書くことにしたのも、胸の底に常にある寂しさを紛らわすためだ。

しかし、考えれば考えるほどわからなくなってくる。

昔の思い出だけが頭に浮かび、椿は読みかけの本をしまい目を閉じた。

昔の自分が笑っていた。



「ねえ、蓮はどんな時に歌を思いつくの?」

次の日の放課後、椿はピアノを弾く蓮に訊ねた。

蓮はピアノを弾く手を止め、「う〜ん」と考え込む。その顔もかっこよくて椿はじっと見つめた。

今日は美桜がいない。部活だからだ。美桜がいないことに安心する自分がいて、椿は嫌になる。大切な友達なのにそんな風に思う自分がいるなんて、知りたくない。

「僕は…自分の気持ちを歌にするから、その時の気分次第だと思う。思いついた言葉を並べていったら、自然と歌ができるんだ」

「そっか…。ありがと」

椿の耳にはまだあの歌が残っている。花火大会で蓮が想いを歌った歌。美桜に対して歌った歌。
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