four seasons〜僕らの日々〜



「椿ちゃん……?」

「えっ?……あっ」

椿の頰を涙が伝っていた。

蓮と付き合った日を思い出していて、気がつけば泣いていた。

「ありがとう。今日はもう帰るね」

まだ蓮の歌を一曲も聴かないまま、椿はかばんを手に持ち音楽室を出た。

蓮は少し安心したような表情だったかもしれない。それが、たとえ気のせいでも見間違いでも辛い。

やっぱり私は愛されない……。そう思いながら歩く椿の胸が痛む。泣きたくなった椿は、誰もいない教室で、声を殺して泣いた。

美桜が羨ましい。何度も思った。

蓮に愛されて、きっと大切にされていくーーー。二人の未来と自分の未来を考え、また辛くなる。いつからこんなに泣き虫になったのだろう?

赤い空が椿を寂しげに照らした。



脚本を書き上げて先生に提出すると、先生は「読むのが楽しみだ!」と喜んでいた。

「明日で十月です。こんなに時間がかかってすみません」

椿が謝ると、先生は「大丈夫、ありがとう」と笑ってくれた。

安心しながら職員室から出ると、「あっ!椿ちゃん」と聞き慣れた声が聞こえた。
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