four seasons〜僕らの日々〜
しばらく手話ソングを練習したあと、練習は終わりとなった。

「椿ちゃん!また明日!」

「またね」

蓮と美桜は楽しそうに帰って行った。その後ろ姿を見て少し胸が痛む。

「ダメじゃない!ちゃんと言わなきゃいけないのに……」

椿は気持ちを落ち着かせるため、かばんの中から文化祭でする劇の台本を取り出し、演じ始める。

椿は、主役のジュリエットを演じることになった。悲劇ではなく幸せなラストなのに、素直に喜べない。

『ロミオ!私は……』

台詞が頭から何度も消える。心は何をしても落ち着かないままだ。

「……ちょっといいか?」

教室のドアが開き、翔が中に入ってきた。翔の姿に椿は少し驚く。

手話ソングのメンバーは、蓮と美桜と椿と翔と空だが、翔はみんなと一緒に練習したことがなかった。どうやら美桜が個別で教えているらしい。
< 144 / 280 >

この作品をシェア

pagetop