four seasons〜僕らの日々〜
蓮が歌を歌いたいと言った時に、椿たちの前でこう言った。

「僕は、ずっと好きなことを隠して逃げてきた。でももう嫌なんだ。……美桜ちゃんみたいに前に進みたい」

蓮は、強い意志を宿した目で続ける。

「美桜ちゃんや、椿ちゃんに、歌を聴いてもらう時、とても幸せなんだ。歌をみんなにも聴いてもらいたい。……だから、僕に協力してください」

その目を椿が見た時、蓮から『この嘘だらけの関係も終えよう』と強く言われている気がした。

椿も伝えようと覚悟を決めたつもりだった。しかし、すぐに胸は高鳴ってしまう。

蓮のバカ……。そう思いながら、椿は息を吸う。


悲しみが心を包んでも
大切なことはそこにある
君がくれた言葉に僕は救われる


手話ソングが始まると、静かだった体育館はまた騒がしくなる。

しかし、それは冷やかしなどではなく、椿たちに向けられたエールだ。
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