four seasons〜僕らの日々〜
今まで、蓮が椿を拒んだことはなかった。付き合うことも、初デートも、蓮は自分の意思を殺して一緒にいてくれた。

涙がこぼれそうになり、慌てて堪えた。

椿の悲しみを無視して、劇はどんどん進んでいく。物語はハッピーエンドへと向かっていった。

椿は心の中で蓮に話しかける。

蓮、美桜のことが好きなんだね。ずっと前から知ってたけど、諦められなかった。文化祭でどんなに二人の楽しそうな姿を見ても、心のどこかでは諦められなかった。でも、蓮が拒んでくれたから、やっと諦められるよ。

劇は終わりへと向かっていく。

椿は真っ白なドレス、蓮は白いスーツを着て舞台に立った。

『互いに愛しあうことを誓いますか?』

神父役の男子が二人に訊ねる。蓮はためらうことなく『はい、誓います』と言った。

本当は嘘でも幸せなシーン。椿がずっと憧れているシーン。

椿も『はい、誓います』と答えながら、蓮に心の中で話しかける。

蓮、私のキスを拒んだんだから、嘘でも永遠の愛なんて誓わなくていいんだよ。だってあなたのジュリエット……ううんシンデレラは美桜でしょ?私は、この劇のジュリエットじゃない。きっと本当の……ううん、本当のジュリエットは悲劇だったけど、ロミオに愛されていた。

緞帳がゆっくりと降りていく。魔法の時間が終わる。

シンデレラが、灰かぶりに戻る……。
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