four seasons〜僕らの日々〜
翔がしかめっ面をしながら女の子たちを見ていると、空が真面目な顔をする。

「翔の気持ちもわからないわけじゃないよ。俺だって同じだからね。でも、みんな一生懸命翔を想って作ったってことは絶対に忘れちゃいけないよ?」

「わかってる」

そんなことを話していると、一人、また一人と女の子が近寄ってくる。

「翔くん!これよかったらもらって!」

「これ、一番上手にできたんだ〜!!」

両手がチョコで埋まっていく。翔は女子のうっとおしさに思わず何度も舌打ちしそうになった。

「……蓮、すごいね」

「うん……。本当にすごいよ……」

歩く翔と空の後ろで、女子の大声と美桜と椿の声が聞こえた。

振り向くと、蓮が女の子に囲まれている。美桜と椿は哀れそうな目で蓮を見つめていた。

翔は冷たい性格のためか、女子はチョコを渡すとさっさとどこかへ行ってしまう。しかし蓮は優しいため、女子はチョコを渡したあとも蓮に群がっている。

蓮を見つめる美桜の目が、少し悲しげで翔の胸が痛む。大嫌いな蓮でもいいから美桜を笑顔にしてほしい、と何度も思った。

下駄箱を開けると、チョコがたくさん入っていて、翔はうんざりしてしまう。美桜のことがなければ、今日は学校に来なかったかもしれない。

廊下を歩いている時も、教室に入った時も、自分の机の上や中にも、チョコが入っていて翔は甘いものが嫌いになるかもしれないと思うほどだった。
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