four seasons〜僕らの日々〜
翔はため息をつきながら、机の上のチョコをかばんの中に入れる。男子たちの羨ましげな目がうっとおしい。

翔の頭の中では、ずっと美桜のあの悲しげな目が浮かんでいる。

蓮もたくさんチョコをもらうだろう。その度に悲しげな目を美桜がするのかと思うと、翔は痛む胸を押さえることしかできなかった。



「翔!木下さんからチョコもらった?」

昼休み、翔がお弁当を食べ終わり本を読んでいると、空が手にチョコを持って話しかけてきた。

「いや…まだだ…」

翔はチョコをもらえるのか不安になる。今日はまだ一度も話していない。

空の持っているチョコを翔は見つめた。おいしそうな手作りのクッキーがかわいい袋に詰められている。

「これ、木下さんの作ったクッキー。そしてこっちが椿!」

嬉しそうに空は椿の作ったチョコを見せる。ハートの形の型抜きチョコだ。

「……よかったな」

翔がそう言うと、空は嬉しそうに顔を赤く染めた。

「嬉しいよ!義理だけど、椿からもらえたんだから!」

しばらく椿からチョコをもらえた嬉しさを語ったあと、空は思い出したかのように翔にチョコを渡した。

「これ、椿から。渡してって頼まれたんだ」

空と同じハートの形のチョコだ。椿からもらえるとは思っていなかったので、翔は少し驚く。

「あ、ありがとう…。ところで、美桜から渡すよう頼まれたりは……」

「してないよ!木下さんのところに行ってみたら?」

空はそう言って自分の席に戻った。

翔は立ち上がり、美桜のクラスへと向かう。廊下に出ると、恥ずかしそうな女子が何人もいた。これからチョコを渡すのだろう。
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