four seasons〜僕らの日々〜
音楽室からは、きれいな歌声が響いていた。翔の胸が高鳴る。大好きな人の歌声……。


あと一歩で踏み出せる勇気
あふれ出す想いはいつ伝えられるかな?
知らない君を知るたびに
「好き」って言ってしまいそうになる
もしも時間が止められたら
君と永遠に一緒にいられるのかな


音楽室の窓は開いていて、外から冷たい風が美桜を包む。長い髪が風に揺れて、翔の目を奪っていくーーー。

美桜が歌っている歌は、美桜が好きな歌手の歌だ。

自分と重ねているのだろうか、と翔は歌い続ける美桜を見つめながら胸を高鳴らせる。前はそう思うたびに傷ついてきた。美桜が好きなのは蓮だから。蓮を想って歌っているのだから。

しかし、今は翔自身も驚くほど気持ちは落ちついている。美桜が歌い終わったあと、拍手を送るほどだった。

「えっ!?翔くん、いつからいたの?」

「一番のサビのところからかな」

「ええ〜!!いるなら入ってきてよ〜。恥ずかしい……」

顔を真っ赤にする美桜を、翔は微笑みながら見つめる。そして、言った。

「放課後、渡したいものがある」

美桜は驚いた顔を見せ、「えっ?私、誕生日とかじゃないよ?」と言う。

「海外では、男もプレゼントを渡すらしい。……受け取ってくれないか?」

「……わかった。私も、渡さないといけないものがあるしね」

美桜は微笑みながら言った。

翔は、美桜に伝えることの覚悟を決めた。椿の気持ちが少しわかった気がして、泣きたくなった。

「……ありがとう」

他にも言いたいことはあったが、それしか翔は言えない。言ってしまったら、泣いてしまうかもしれないからだ。



帰りのホームルームが終わると、翔はすぐに音楽室へとやって来た。まだ美桜は来ていない。
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