four seasons〜僕らの日々〜
しばらく泣いたあと、美桜は帰っていった。音楽室に静けさが戻る。

ただ立ち尽くす翔の頭の中に、美桜との思い出が浮かんでは消えていく。初めて話した時のこと、体育祭の時のこと、泣きじゃくる美桜を慰めたこと、夏祭りでのことーーー。

その思い出全てが輝いて、翔の心を揺さぶっていく。

気がつけば、翔は泣いていた。目から涙を流していた。

泣いていると自覚すると、翔の目からこぼれる涙は激しくなった。

この選択が正しかったのかは翔にはわからない。結果的に自分の気持ちを捨てたのだ。しかし、自分の気持ちよりも美桜の方がずっと大切だった。

「……ありがとう……」

音楽室に翔の泣き声が、響いた。

苦いものは、翔の心を押しつぶすかのように飲み込んでいく。しかし、その中にほんの少しだけ甘い幸せが隠れていた。
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