four seasons〜僕らの日々〜
三月〜それぞれの思い〜
〜椿の思い〜

あの日、松井くんから蓮がもう歌わないと言ったと聞いてショックだった。

だって、私は知っているから。蓮が作詞作曲を覚えて歌う楽しげな姿を見てきたから。蓮が歌うことも、歌を作ることも好きなことを知ってる。

……作詞作曲が好きなことをバカにされてショックだったことも、大切な人が遠くに行ってしまうことになって、辛い思いをしたのも……知ってる。

蓮は優しすぎる不器用な人。

お父さんが死んで傷ついていた私に、優しい嘘をついてそばにいてくれた。わがままを聞いてくれた。

私は愛されたかった。優しくされたかった。……おとぎ話みたいな永遠の愛に憧れ、それを求めた。

でも、私は蓮の目には『友達』としか映らなかった。それが悲しくて、苦しかった。

……きっと、美桜や蓮も同じように苦しんだんだろうな。結局、私の欲でみんなを傷つけてしまうことになった。

蓮が美桜を傷つけたのは、私のせい。私が常に蓮の意思を殺していたから。

美桜の方を見てほしくなかった。私を愛してほしかった。それを言葉にしなくても、蓮に伝えていた。

蓮が私を拒んだのは、同じ舞台に立ち、『ロミオとジュリエット』を演じた時。あの出来事があったから、私は蓮を諦めることができた。

でも、蓮は私を傷つけたと思ってしまったのかもしれない。だから美桜を傷つけた。
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