four seasons〜僕らの日々〜
「ほら……楽しいよ……」

放課後の音楽室。ピアノを男の子は弾いた。しかし、歌うことができない。しばらくしてピアノの音も消えた。

心に花火は上がらなかった。少年は悲しみでいっぱいだった。



それから時が経ち、男の子は高校生になろうとしていた。

春休み最後の日。

ぼんやりとベッドに横になっていると、電話がかかってきた。

「もしもし……」

「あっ、あのね一緒にどこかに出かけない?ずっと春休み中家にこもっていたし…」

「……うん」

断るのも面倒で男の子は行くことにした。

町は人であふれている。待ち合わせ場所へ向かう男の子の足が、不意に止まった。

スカートに顔をうずめて泣いている女の子がいる。気がつけば、その子の肩を優しく叩いていた。
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