先輩は、甘い。
KUIS 8


「凛(リン)!行くよ!」


「う...、うんっ」


尾川(オガワ)凛、神田外語大学1年生。


数多くある学科の中で、英米語学科に入学して早くも2週間が経った今日この頃。


迷い込んでしまいそうな程の広さの大学で、私は8号館の『KUIS 8』という場所に足を運んでいた。


「あ、凛!あそこが空いてるよ」


「そ、そうだね…」


昼も終わりというこの時間では利用者が少ないらしく、私たちの目的のテーブル席は空きだらけだった。


「緊張する…」


神田外語大学は、様々な国の言葉に富んだ大学だ。


衝撃的な構造ばかりの学内では、自分の知らない言葉が日常のように行き交っている。


そして他にも大学側は私たち生徒のために、面白いシステムを用意してくれていた。


その1つが、この『KUIS 8』。


理想的な教育環境として整えられたこの新校舎では、英語でしか会話をしてはいけないエリアがあるのだ。

< 1 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop