先輩は、甘い。
「凛、さっきの授業、調子よかったね!先生も発音がよかったって褒めてたよ」
お昼時間、いつも通り食神でご飯を食べているとカナが嬉しいことを言ってくれた。
「やっぱり暁良先輩の指導のおかげかな?」
「っ…何言ってんの。全部私の実力だし」
途端に跳ね上がる自分の心臓を無視して、思ってもない言葉で本心を隠す。
「ふふっ、それもそうだね。でもほんと、凛、変わったよね」
「そう?」
「うん。前よりずっと、いい顔するようになったよ。オドオドしてるとこは、まだちょっと治ってないけど」
「うっ…それは元々の性格だから仕方ないの」
「あはは、そっか」
「おーい、カナー!」
「あ…ごめん、呼ばれちゃった。ちょっと待ってて」
「うん」
友達に呼ばれたカナを見送ってから、私はまだ残っていたお昼を平らげる。
「凛…」
持て余した時間でスマホをいじっていれば、戻ってきたカナが気まずそうにイスを引いた。
「おかえり。どうしたの?何かあった?」
「凛……落ち着いて聞いてね?」
「?うん…」
「今、聞いたんだけど……暁良先輩、留学するんだって」
「……え?」