先輩は、甘い。
「Hey, can I touch it for a while?
(ねぇ、少し触ってもいい?)」
「え、あ、Yes…」
「Thank you.Well, it's smooth.(まぁ、サラサラね)
What kind of care do you usually do?
(普段どんなケアをしているの?)」
「うえっ!?あ、え、えーっと
Treatment that does not wash away…
(洗い流さないタイプのトリートメントとか)」
「Where do you sell it?
(それはどこに売っているの?)」
「え!?え、えっと…」
次から次へと英語で質問をされて戸惑いを隠せないでいたその時、
「Sorry.It's selfish and bad, can I get her?
(勝手で悪いんだけど、彼女を貰ってもいいかな?)」
「え…」
掴まれた腕に驚いて振り向けば、そこにはさっきまでニタリ顔を作っていた彼の姿。
社交的で爽やかな笑顔を浮かべて言えば、2人は「Yes」と快い返事で別れてくれた。
「なんなんですか」
「何が?」
席に戻って聞くと、彼はとぼけたように聞き返してくる。
「自分であの外人に話しかけてこいって言ったんじゃないですか。それなのに、なんで割り込んできたんですか」
「刺々しい言い方するなー。お前の上達の程度はさっきので大体分かったよ」
「えっ?」
「確かにあの日よりはマシになってるみたいだけど、まだまだだな。
単語の発音は間違えるし、うろたえすぎ。
ていうか、そもそも俺はメガネの男と話してこいって言ったのに、なんで前にいる女と話してんだよ」
「それは、あの女の人が話を繋げてくれたから…」
視線を逸らして答えれば、彼は盛大にため息をついた。