約束の日 ~龍神の守護する国~
神官の白い衣を纏った姿。

「龍貴…竜己…?」

耳元で聞こえた父王の呟きに反応して、泣き伏せていた鳳珠が顔を上げた。

「何者だ」

声を荒げて敵将が神殿の方を仰ぎ見る。

人影は足を踏み出す、地のない所に。

誰もが滝壺へ真っ逆さまに落ちると固唾を飲んだが――

その者は何もない宙を、まるで透明な橋があるかのようにして、真っ直ぐに城へと歩み寄ってくる。

近づくにつれ、姿は鮮明になる。

先程までここにいた、滝底へ身を投げた…竜己だ。

雷が轟く中、彼が壇上の床に、降り立った。

驚き戸惑っている敵将に青い双眸を向ける。

優しい光を湛えていた瞳が、今まで見られなかった強い意志を感じさせ、深い色彩を放つ。

「神官が…どうやってここに…?」

見ていたはずの敵将が、呟く問いに答える声はない。
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