約束の日 ~龍神の守護する国~
見ていたはずの敵将が、呟く問いに答える声はない。

誰も声を発する者がいない静寂の中、暗雲から雨が降り出した。

「雨が…」

静まり返った空間に竜己の声が響く。

「…降り続いているようですね」

「? 何のことだ」

「局部的に雨が降り続けば、災害が起こります」

すーっ竜己が腕を伸ばし指し示した方角は、雨雲が立ち込め流れてきた…隣国。

「山湖の様子はどうですか?」

竜己が問いかける。

山地の多い土地を領土とする彼らの街の中心は高原地帯にある。

山河に囲まれ、大きな湖を有する土地は、魚や水にも恵まれ農作物も育つ比較的豊かな領土だ。

そのため、中央国家の恩恵があまりなく、逆に奉納する物の方が多いことから、今回の乱に発展したとも言える。
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