カボチャの馬車は、途中下車不可!?

あぁ!
なるほど……それか。

私はようやく、腑に落ちた。
朝っぱらからの、女子社員によるヨイショ祭りの理由。
そして一気に脱力する。

どんな情報網してるの、この会社。

「お願いしますっ! 次は絶対あたしで!! ね、飛鳥さん!!」
ラムちゃんのお願いポーズを、「はいはい」って今度は私が右から左に流して、見慣れた営業部のフロアへ入った。


「おはようございまーす」
「はよーっす」

ぽつりぽつり、出勤し始めた同僚たちに挨拶しながら。
雑誌やポスターが積みあがった、雑然としたデスクの間を抜けていく。

「おはよう」
自分の席にたどりつくと、向かい側から同期の坂田慎太郎(さかたしんたろう)が「おーっす」って顔を上げた。
「坂田、早いね」
「おう、今朝はオレが送り当番でさ」
「あぁ、清香(きよか)ちゃんの幼稚園?」
「ん」

「ね、ね、お願いしますっ! 飛鳥さん、次の飛鳥マジックは絶対あたしで!! 飛鳥さんの一番弟子はあたしですよね!?」

ぴょんぴょん飛び跳ねながら、まだ叫ぶかオノレは。
弟子をもった覚えはこれっぽちもないんだけど。

「なんだよ、その飛鳥マジックってのは?」
不思議そうな声に、「坂田さん、知らないんですかぁ?」ってラムちゃんが目を丸くした。
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