カボチャの馬車は、途中下車不可!?

——僕から攻めるからね。覚悟しておいたほうがいいよ?

あれはどこまで本気なんだろうか。
「……うまくかわせる自信、ない」

これでも10年近く営業畑で生きてきて。
トークには結構自信あるし、クレーム対応にもある程度慣れてるつもりだけど。

彼と一緒にいると、過去のデータやハウツーなんて、なんの役にもたたない。
予測不能、コントロール不可能。
乱気流の中で操縦桿握ってるみたいな感じなのよね。

たった数時間過ごしただけだけど、身に染みてる。

「手っ取り早く、ほんとのこと話しちゃえば? マユミじゃないんですって」

うん。それは考えた。でも……

「それで彼が、本物のマユミに会わせろとか言い出したら? 青山さんに迷惑かかっちゃったら可哀そうでしょ。彼女にはもう婚約者がいるんだから」

「でも、もとはといえば、彼女が招いたことでしょう?」

「そりゃそうだけど……」
曖昧につぶやきながら、くるくる、フォークを回した。

「だいたいさ、彼女はどうしてるわけ? 今日出社してるの?」

「あ、それが……さ」
朝のミーティングで、新条部長が告げた内容を思い出した。
「青山さん、しばらく実家に戻るんだって。本当に体調よくなかったらしいの。入院するかもって」
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