カボチャの馬車は、途中下車不可!?

——ケースバイケースでいいんじゃないかな。特に男と女の場合は。

あんなこと言ってたけど……
私が年上だと知ったら、彼も同じような反応をするんだろうか?

「そうだね、じゃ、そうしよっかな」

なんとなくムッとしてしまった気分ごと絡めとるように、勢いよくフォークにパスタを巻き付けて、パクっと飲み込んだ。


◇◇◇◇


「ほんと悪いなぁ、忙しい真杉さんにこんなこと頼んじゃって」
オオタフーズ、といかめしく刻み込まれた御影石の前で会うなり、日下秀則(くさかひでのり)課長が申し訳なさそうに頭をかいた。

「いいえ、大丈夫ですよ」

首を振りながらも、恵比寿様みたいな福福しい丸みを持つ顎に無意識に目が吸い寄せられてしまう。

部長の同期だから、まだ30代後半だと思うけど。
とてもそうは見えない老成した雰囲気があるのよね、この人。
「悪いなぁ」なんて頭下げられると、こっちが恐縮してしまう。

「途中参加の代打なので、どれだけお役に立てるかわかりませんから」

「今日は挨拶だけだからね、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」

「はい」って頷いて。
風格を感じさせるレンガ造りの建築物を見上げた。

ここが、青山さんのピンチヒッターとして私が担当することになる、オオタフーズ本社だ。
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