カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「さすが創業50年越えの老舗ですねえ」
1階ロビー、入口を入ってすぐ。
目立つ場所に、まるでちょっとした博物館のようにディスプレイされた歴代ヒット商品や年表を眺めながら、感嘆の吐息をついた。
それらはすべて、私も子どもの頃から知ってるお菓子やレトルト食品で。
「あ、このオマケ、集めてたんですよねー」
知らず知らず、テンションも上がってしまう。
年表はどんどん新しくなって、平成へ。
「あ、『メインハーブ』! さすがにスペース、大きいですね」
喜ぶ私を見て、日下課長がニコッと頷いた。
「オオタフーズ最大のヒットだからね」
ハーブをがっつり使った料理をレトルトパウチに封入したこのシリーズは、本格的なフレンチの味を自宅で手軽に楽しめるのが特徴で。
独身OLから、主婦、高齢者まで、幅広いファンがついている。
「そうそう、それがうちを救ったんだよねえ」
妙に平ぺったい声がして振り向くと、薄く笑いながら、背の低い男性が立っていた。
「じゃなきゃ、過去の遺産ともども、とっくにつぶれてる。こんな一等地の本社屋なんて、真っ先に売られてるだろうね」
50代……くらい?
くぼんだ目とたるんだ頬が、顔全体のバランスを崩してて、表情の読みにくい人だな。
誰だろう?