カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「さすがマスコミ相手に商売してるだけあるよね。前の彼女といい、こちらといい、御社は美女ぞろいで羨ましいなぁ」
なんだ、こいつは……
引きつりそうになる口元を、なんとか持ち上げて。
「……お褒めいただき恐縮です」
如才ない笑みを貼り付けておく。
「女性で営業って大変でしょー? 俺営業畑一筋だから、わかるんだよね。あ、俺本宮ね」
渡された名刺を見ると、本宮雄一(もとみやゆういち)とある。
営業部の課長らしい。
「ねえ、日下くーん、今度飲もうよ。彼女の歓迎会ってことで」
「は、はぁ。そうですね、ではいずれ」
「いずれ、なんて言わないでさ。来週あたり、どう? プレゼンも近いし、いろいろ情報、欲しいでしょ?」
「はぁ、では……そうですね」
日下課長が、顔中をハンカチでせわしなく押さえてる。
「頼んだよ。店決まったら教えて」
ポンポン。
私と日下課長の肩を、気安い調子で叩いて、本宮さんは足取りも軽く立ち去って行った。