カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「……どういう方ですか、あの人は」
声に思いっきり嫌悪感を滲ませてしまってから、「すみません」って頭を下げた。
「いいよいいよ、ちょっと癖のある人だからね」

ちょっと、じゃないでしょう。
って思ったけど、疲れた様子でため息をつく課長を見たら、何も言えやしない。

「実はあの人、僕の大学の先輩なんだよ。この前食品関係の展示会で偶然再会してね」

え……ってことは。
まだ40代初めってこと?

それにしちゃ、ずいぶん生え際が……
いや、それには触れないでおこう。

「彼のおかげで今回のプレゼン、参加できることになったようなものだからね」

「あの人って、営業ですよね。代理店の選定なんて、関わりあるんですか?」
私が首を傾げると、日下課長が声を潜めた。
「それはさ……ちょっとここでは言いづらいから。後でもいい?」

「あ、はい……」

一体、何なんだ?
湧き上がる好奇心をぐっと押さえて、ひとまず口を閉じた。


さっきの出会いが出会いだっただけに身構えてしまったけど、向かった会議室で紹介された広報の担当者は、ごく普通の人で、ほっとした。

ひょろんと背が高くて、首も太くて長い。
なんだかキリンみたいな人だな。

「広報の樋口治樹(ひぐちはるき)です。よろしくお願いします」
キリンだけに、ってわけじゃないけど。
草食男子っぽくて、なんとなく頼りないような……
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