カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「よろしくお願いします」
「オリエン資料は見ていただいてると思いますが……」
癖なのか、カチカチって何度もボールペンを神経質そうにノックしてる。
動物かな? 何かがヘッドにくっついてる、かわいいやつ。
やはり草食系か。
「はい、確認させていただきました。『メインハーブ』は、私も普段からよく使わせていただいてる大好きなシリーズなので、記念すべき広告に関わることができて、とても光栄に思っております」
「そうですか、ありがとうございます」
草食男子が、ほっとしたように白い歯を見せて笑った。
今回の仕事は、メインハーブの発売10周年を記念するキャンペーン。
うちともう1社、計2社でのコンペの末、決定することになってて——たぶん、相当厳しい戦いになるだろうなってことは、わかってる。
っていうか明らかに、うちは不利だ。
何しろもう1社っていうのが、業界最大手の代理店・帝電サマで。
オオタフーズは、過去帝電以外と取引した実績がない。
日下課長がコンペ参加を知らせた時、フロアにどよめきが起こったくらいだもの。
だから、もしここでうちが勝つことができれば、それはもう大ニュース! ってこと……なんだけど。
そうそう簡単にはいかないだろうなぁ。
コンペの前に見極めておきたいのは、クライアント社内で誰に広告関係の決定権があるのかってこと。
その人の好み——色や言い回しまで、チェックできたらベター。