カボチャの馬車は、途中下車不可!?
確かに、あのシリーズのおかげで、オオタフーズがV字回復して倒産回避できたのは、有名な話だ。
その開発者なら、そりゃ社長の覚えもめでたいわよね。
じゃあ、広告に関する諸々の決定権も、広報部じゃなくてその大河原さん、ってことになるのかな。
「あそこって伝統的に、広報部と開発部、あまり仲が良くなくてね。なのに、大河原さんの登場で開発が一気に天下とっちゃっただろ。当然広報としてはおもしろくないわけ。裏では結構、足の引っ張り合いとかすごいらしいよ。そんな2つの部署の間に入ってクッションになってるのが、営業部なんだ」
「つまり……情報が営業部に集まってくるってことですか?」
「そういうことだね。特に本宮さんは、大河原さんに気に入られてて、いろいろ無視できない存在でさ」
なるほど、と私は頷いた。
「うちがコンペに参加できることになったのは、本宮さんが口をきいてくれたから……?」
「うん。そろそろ帝電以外とも仕事してみたいって大河原さんが漏らしてたらしくてね。参加してみないかって声かけてくれたんだ」
それで、あんなに態度がでかかったのか。
納得。
せいぜい虎の威を借る狐ってところだけど。
ふんっと腕組みをしたところで。
日下課長が大きな体を縮めながら、私を上目遣いで見た。
「だからさ真杉さん、ほんとにほんとに申し訳ないけど……もし接待、ってことになったら……来てくれる?」
あぁ、本宮さんが言ってたやつね、歓迎会とかいう。
「あ、それはもちろん、行きますよ」