カボチャの馬車は、途中下車不可!?

ひくひくと、頬がひきつる。
そういえば今朝、何人かがスマホをかざしてたっけ。
あの時の写真が社内にバラまかれてるとしたら……うぅ、恐ろしい……。

「デートの時は、遠慮せずに帰っていいからね」

「いえ、違うんです。彼は本当に、そういう関係じゃ……大体、連絡先もっ——」


言葉を、ブツっと切ってしまった。


あれ……そうだ。
単純すぎる事実に、遅まきながら気づく。

彼、私の連絡先、全然知らないじゃない?
携帯番号もラインのIDも。
今朝だって何も、聞かれなかった。

もしかして……

その可能性に、ギクリとした。
アプリ経由でメッセージが来てたり、とか?
だったら早く、青山さんに連絡とらないと——

ひそかに動揺する私の横で、日下課長は「よかったよかった」と恵比須顔をこくこく、小さく上下させている。
「ほら、『飛鳥マジック』って、あれ全部他人の縁を結んでるわけだろう? 自分のことは二の次みたいだからさ。心配してたんだよねえ」

「はぁ……」

「大体、世の中って不思議だよねえ。どうして僕みたいな平凡な男のところに可愛いお嫁さんが来て、真杉さんみたいな美人さんが一人なんだろうねえ」

「はは、は……」

結局ノロケかっ……新婚バカップルめっ!
脱力しながらの突っ込みは——心の中だけにしておこう。
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