カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「そこで停めてください」
運転手さんに告げて、目的地に向かってタクシーが減速し始めた時だった。

「あれ、今日って平日だよねぇ。ドラマの撮影なんてないよね?」
外を眺めながら、日下課長がぽつりとつぶやいた。
「なんか人が集まってない?」

つられるように窓の外を見ると。
YKDビルの前に設けられた広場……普段から待ち合わせによく使われるスペースだけど。
今日は確かに人が多いな。

道行く人も、何かに気を取られながら振り返り振り返り、歩いてて。
OLさんたちなんか、明らかに同じ方向を見て、興奮気味にささやきあってるし。

なんだろう?
気になって、視線の先をたどっていくと……

広場の中央、いくつか置かれたオブジェの一つにもたれかかるようにして、誰かが立っていて。
みんなはその人を遠巻きに眺めているらしい。

芸能人? 
こんな平日のオフィス街に?


さらに目を凝らして。

「……は?」



ちょ、ちょっと待って……あれ……



「ねえ……あそこにいるの、真杉さんの彼氏じゃない?」

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