カボチャの馬車は、途中下車不可!?
——ねえねえ、あの人モデルかなぁ。
——めちゃくちゃかっこいいねっ!
——写真撮ったら怒られるかな?
——何の話してるのかな? やっぱり彼女かな、あの人?
帰宅途中のOLたちが、ハートマーク飛ばしながら見てることに気づき、ぎくしゃくと口をつぐんだ。
あぁもう。
今朝と同じパターンだ。
どうしてこいつ、こんなに注目集めてるのに平然としてられるわけ?
居心地が悪くなって視線を落とすと——肩にかかっていた重みがふっと消えた。
「……え?」
奪われてしまったカバンに手を伸ばしながら叫ぶ。
「か、返してよ、私のっ!」
「何が食べたい? 夕食」
「は? や、でも、まだ仕事っ……」
早く断らなきゃ。
早くっ……
焦りながら口を開きかける私の頭へ、ライアンはあやすようにポンと手を置いて。
「このあたり駐車禁止らしくてさ、車、ちょっと離れたところにおいてあるんだ」
そのままさっさと、歩き出してしまう。
「や、だからそのっしごと、が……え、あの……」
人の話を聞きなさいよっ!
「ライアンってばっ!!」
叫び声もむなしく、その長い足が止まることはなかった。