カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「100歩譲って、いや、1000歩くらい譲って、飛鳥が僕にまるで興味を持っていないとしよう。彼氏に夢中で、他の男なんかどうでもいい。僕とのキスに感じちゃったのは単なる気の迷いで、キス以上を望んでいるのは僕だけだとしよう」
か、彼氏のくだりは嘘だけど。
言えばややこしくなるだけだから、黙ってこくこく、頷いておく。
「たとえそうだとしても——」
言葉を切ると、彼は体をかがめて、私と視線を合わせた。
「諦める気は全くないね」
「っ……な、……なんで……?」
真正面にあるその瞳に、たじろいだ。
そこには確かに、嘘なんかついてる気配はなくて……
思考が、追いつかない。
どうしてそこまで?
「なんで私なの? アプリ使っても使わなくてもいいけど、ライアンなら他にもっと素敵な人がいくらでも見つかるでしょう?」
例えばほら……と、私がクルーズ船で会った中国人美女を思い浮かべていると、
美貌の主が、意味ありげに瞳を細めた。
「理由、教えてほしい?」
り、理由?
うー……ん、そりゃ……
躊躇いながらも、首を縦にした。
それは確かに……気になる。
「じゃ、乗って」
「う…………ぅ」
絶対この男、おなかの中に悪魔を2、3匹飼っているに違いない。
どこまでも清廉な笑みを浮かべる彼を苦々しくにらみながら、私はしぶしぶ、助手席へ乗り込んだ。