カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「特に食べたいものがないなら、今夜も僕のおすすめでいいかな?」
そんな言葉とともに、車はスムーズに走り出して。
暮れ始めた都会のビルの合間、天の川のように連なった光の列に、器用に分け入っていく。
左ハンドルの国からやってきたとは思えないほど、ライアンの運転は手慣れていて、迷いがない。
いつの間にか。
ハンドルに置かれた、その骨ばった手の男っぽい動きに見惚れていたことに気づいて、私はそっと視線をはずした。
「乗ったんだから、もう教えて。理由っていうの」
「理由?」
「さっき言ってたでしょ。どうして諦めないのか、理由教えてくれるって……」
「あぁそれね。うーん……どうしようかなぁ。やっぱり言わなきゃダメかなぁ」
返ってきたのは、のらりくらりとした、笑い交じりのフザケた口調で。
もしかして私、揶揄われたの?
それでおとなしく乗るとか……バカみたいじゃない!
カッとして。
シートベルトに手をやりながら、「帰るっ! 停めて!」って、叫んだんだけど——
「運命だと思ったんだ」