カボチャの馬車は、途中下車不可!?
はぁあ……
ゴンッと助手席側の窓へ額を当てた。
ただ今午後9時45分。窓の外には、見慣れたマンション——私の自宅だ。
食事の後、最寄り駅でいいと言った私を押し切って、彼はここまで送ってくれた。
「やり方、わかるの?」
ちらりと運転席を見れば、私から手に入れたスマホをためらいなく操作するライアンがいる。
「わかるよ。こんなの、大体同じだろ」
同じとかいう以前に、全部日本語表記なんですけど。
嬉々として自分のスマホとフルフルする彼を、なんとなくムカムカしながら眺めた。
『連絡先教えてくれないなら、毎日会社まで会いに行くから』
って脅されて、仕方なく渡してしまったんだけど。
つまり。
これで、彼とつながりができてしまったということ。
また会うかもしれないということで……
どうしよう……
答えのでない問いを、また悶々と繰り返してしまう。
青山さんに、どうやって説明すればいいんだろう?
ううん、それより。
もっとどうにかしないといけないのは、私の方だ。
私の気持ちだ。
食事の間中——彼のわずかな視線や仕草にさえ、ざわざわと心を揺さぶられっぱなしだった自分を思い出して。
あぁもうっ……——
情けなくて歯がゆくて。窓ガラスにぐりぐりと、頭を押し付けた。