カボチャの馬車は、途中下車不可!?
今夜彼が連れて行ってくれたのは、神楽坂。
一軒家をリノベーションした隠れ家風のイタリアン。
内装も客層も食事も、前回と同じく、それはそれはセレブな雰囲気で彩られていて……文句つけようのないくらい、パーフェクトなひと時だった。
今日もやっぱり、彼は優しくて楽しくて。
ついつい、また笑顔を返してしまって。
まずいと思った。
このままじゃ完全に、前回の二の舞パターンだ。
彼を思って、何も手につかなかった週末……
彼と関わり続けていたら、あんな状態が続くってこと。
仕事もプライベートも、ひっかきまわされるってことだ。
もう、ゲームオーバーにしてもらうしかない。
だから……
とっておきの、ジョーカーのつもりだったのにな——
さっきレストランで交わした会話を、私は苦々しく思い返した。
——実は私、32歳なの。
美弥子のアドバイスに従って打ち明けると。
デザートのジェラートをすくっていた彼の手が、止まった。