カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「言ってごらん。飛鳥は何がほしいの? なんでも好きなもの買ってあげるよ。アクセサリーでも洋服でも。君のためなら、金はいくらだって出そう。なんなら店ごと買い占めようか?」

音が、単語になり、言葉になり、文になり——


だんだん。

身体の内側に広がっていた熱が、消えていく。
燻っていた種火も、冷えて固くなっていく。

「遠慮しないでねだっていいんだよ。車やマンションでもいいから。ね、欲しいだろう? あぁ、お台場あたりの海が見えるタワーマンションとかどう? 君と一緒に朝まで過ごせるなら、安い買い物だからね」

何、それ。
それじゃまるで……っ

気分が悪い……まるで、耳から毒を流し込まれたみたいだ。


「も、やっ……めて!!」


ありったけの力で彼を突き飛ばして、車から降りると、

バンッ!!
力任せにドアを閉めてやった。

ほんと、悪魔だこいつ。
サイッテーの男。
女性をなんだと思ってるのよ?

肩で息をしながら、にじんだ涙をぐいっとぬぐった。
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