カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「お前なぁ、人と飯食ってる時に自分だけ異次元行ってんじゃねえよ。ワープ女子は篠木だけで十分だっつーの」
坂田があきれ顔で私の前に座っていた。
デコピンされた所をさすりつつ辺りを見回すと……そこは社員食堂。
ピークはもう過ぎたのか席の大部分は空いていて、のんびりした空気が流れてる。
私は手つかずのコロッケ定食を見下ろして、ようやく状況を思い出した。
そうだ、久しぶりにタイミングよくフロアで顔合わせたから、おごってやるって坂田に誘われたんだっけ。
奢ってもらっといて無視するって、私も相当嫌な奴だな。
「ごめんね、ちょっと考え事してて」
「ほうほう、王子様のことで頭はいっぱいか。そりゃそうだよな、職場を花屋にする勢いで花束贈るほど惚れてくれる男なんて、そうそうないもんな」
ニヤニヤ笑いながら言い、坂田は自分の唐揚げにかぶりついた。
「やめてよ、坂田まで。本当に違うんだってば」
反論しながら、力なくコロッケを突っつく。
何度恋人じゃないって力説しても、誰も信じてくれないのよね。
日々の徒労感は、積もるばかりだ。