カボチャの馬車は、途中下車不可!?

あの後、食品関連メーカーの知り合いから情報収集したところによると、大河原さんという人の権力は想像以上のものらしい。
高齢で子どものいない現社長が、後継者として彼の名前を挙げていることもあって、社内では誰も逆らえないんだとか。

「相当いろんなこと、決定権は大河原さんにあるみたいだし……」

だからなんとかプレゼン前には、顔を売っておきたいんだけど。
なかなかタイミングが合わなくて……。
実は今日もこの後、寄ってみるつもりなのよね。

「その……ごめんな、オレに……気ィ遣って、引き受けてくれたんだろ?」

らしくもなく項垂れるから、「ゲホゲホっ」ってコロッケ詰まらせちゃった。
「ちょっ……やめてよ! そういう殊勝な態度、全然似合わないから」

「でもさ、毎日オレより遅くまで残ってるし……忙しくてデートする時間もないんじゃねえの? せっかくあんな男前がお前のこと気に入ってくれたのに」

げ。もしかして……
「坂田も写真見たの!?」

「おう。見た見た。結構あちこちで出回ってるぞ」

「マジですか……」
誰だ、バラまいた奴っ!

「そもそも青山だよ青山。あいつが休まなきゃ……。いつ戻ってくるんだろうな。お前知ってるか?」

ぴくっと止まってしまった手を、不自然に見えないよう再び動かしながら。
「ラインは返ってきたよ」と答えた。
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